YouTuber校長日記

YouTuber校長として、サッカー解説者として日々の生活の中で感じたことや本を読んで学んだことなどを書きます!

みんなで歩もう 「いじめ0」への長い道のり

どうも。南弘一です。千原台高校の校長をしています。

昨日、本校では今年度第1回目の「校内のいじめ防止対策委員会」を開催しました。

全国各地でいじめを苦にして自ら命を絶つというようなあってはならい事案が続出したことを受けて、平成25年に「いじめ防止対策推進法」が制定されました。

これを契機に各市町村教育委員及び各学校ごとに、「いじめ防止基本方針」を定め、「いじめ防止対策委員会」を開催することが義務付けられました。それを受けて、熊本市教育委員会及び本校では年に2回の「いじめ防止対策委員会」を開催しています。

その1回目を昨日開催しました。参加するメンバーは、校長、教頭、各学年主任、人権教育主任、生徒指導主事、健康教育部長、養護教諭、そして、外部委員としてのスクールカウンセラーです。

昨日の会では、各学年主任から「いじめに関する現状の報告」をしてもらい、その後、「いじめをなくすためには、どのようにしていくべきか」というテーマで率直な議論を交わしました。

学年からの報告の中で次のような報告がありました。「あるクラスに特性を持っている生徒がいます。その生徒の特性は、その時感じたことをそのまま言葉や行動に表してしまうという特性で、中学時代にもそのことから周りの生徒たちとトラブルになったことがあったということでした。高校では、まだ大きなトラブルは起きていないけれども、本人と保護者の方と担任の先生がしっかりと話し合いをし、生徒本人の口から自らの特性について、クラスメイトに話をしたいということになりました。事前に十分な準備を整えて、当日は、担任だけではなく、学年主任、養護教諭も立ち合い、副担任が本人に寄り添う形で話をしました。クラスメイト達は、本人の思いをしっかりと受け止めてくれた様子で今のところは、ほっとしているところです。今後もしっかりと生徒たちの様子をみていきたいと思います。」というものです。

私は、この取り組みの中に「いじめをなくしていく」という難題へのひとつの要素が含まれていると思います。

本人、保護者、担任、そして、それを支える複数の教員が「協働体制」の中で、このような機会をつくれたことで、クラスの生徒の間に「共感」が生まれたと思われます。

このように生徒同士が、「共感」できる場面をつくることが「いじめ」という行動を抑止することにつながると考えられるからです。

人の心の動きには、3つの段階があると言われています。1段階目が「理解」です。2段階目が「納得」。3段階目が「共感」です。そして、この段階が上がるほど人は、自分の心を行動に移しやすくなります。

この考えは、古代ギリシャの哲学者アリストテレスが「人の行動を変えるためには、ロゴス(ロジック・論理)・エトス(エシック・倫理)・パトス(パッション・情熱)の3つが必要だ」と説いていることに依拠しています。

つまり、生徒たちに「どういう行動がいじめなのか」を理解させ(ロゴス)、「いじめはしてはいけない」という倫理観を植え付ける(エトス)。ここまでは、すべての教師がやっていると思います。さらに生徒の行動を変えていくためには、「いじめは良くない」ということに心から共感する経験(パトス)を積み重ねていくことが必要なのです。

そういう意味で、今回の取り組みは素晴らしい取り組みだと私は感じています。

昨年度行われた「熊本市いじめ防止対策委員会(熊本市教委主催)」に参加した際に、次のような話を聞きました。

「今のいじめの定義(生徒が心理的又は物理的な影響を与える行為であって、当該行為の対象となった生徒が苦痛を感じているもの)からすると、『いじめ0』というのは、非常に難しい目標であり、その道のりは遠いことは確かです。」

「しかし、我々はそれをあきらめてはいけない。その論拠が二つあります。一つ目は、『シートベルトの着用』。二つ目が『歩きたばこの禁止』です。いずれも、法律や条例が制定される前は、ほとんどの国民がシートベルトをしていなかったし、歩きたばこへの罪悪感もなかった。しかし、いずれも法の制定を契機にみんなが実施するように変わってきました。いじめについても『いじめ防止対策推進法』制定の精神を私たち教育関係者が中心となり、子供たちへ保護者へ社会へ広げていくことにより、きっと『いじめ0』の社会にしていけるはずです。」(吉田委員長・熊本大学教育学部シニア教授談)

私もまさにその通りだと思います。本校でもまだまだ「いじめ0」と言える実態ではありませんが、あきらめることなく前を向いて、この道のりを進んでいきたいと思います。

今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。素敵な1日をお過ごしください。