YouTuber校長日記

YouTuber校長として、サッカー解説者として日々の生活の中で感じたことや本を読んで学んだことなどを書きます!

村田沙耶香著「生命式(河出書房新社)」を読んで思うこと…

どうも。南弘一です。千原台高校の校長をしています。とともに、地元熊本でサッカー解説の仕事もしています。

今日は、久しぶりに最近読んだ本についてお話しします。

その本は、芥川賞作家である村田沙耶香さんの「生命式(河出書房新社)」です。

帯には、「文学史上、最も危険な短編集」と書かれています。この言葉の通り、まさに「村田沙耶香ワールド」と言える不思議な世界観が描かれた12編の短編が収めれています。

「生命式」は、そのうちの1つ目の作品の題名であり、それが著書のタイトルとなっています。

「生命式」とは、近未来の「お葬式」のことであり、私たちの感じている「常識」とは何か?を考えさせられました。

ただ、この作品の感想を詳しくここで話すには、まだ、私の感性が追いついていない感じがするので、興味がある方は是非読んでみてほしいと思います。

今日、お話したい作品は、この短編集の最後に収められている「孵化」という作品です。

主人公は、高橋ハルカ。ハルカはマサシとの結婚を間近に控え、二人は同棲中です。

ただ、結婚式を挙げるにつけて、困ったことがあります。

結婚式をすることで、ハルカの中学時代、高校時代、大学時代のサークル、バイト先、そして、今の職場での友人・知人が一堂に会することになるからです。

なぜ、困るのか?

それは、そのれぞれの時代の彼女の「キャラ」が全く違っているからです。

中学時代は、まじめで何事もきちんとしているキャラで「委員長」と呼ばれていました。

高校に入学すると、「天然キャラ」となり、そこでは「ハルカ」を文字って「アホカ」と呼ばれています。

大学に通うことになり、入会した映画鑑賞サークルでは、「かわいいキャラ」となり「姫」と呼ばれました。

しかし、最初は「かわいいキャラ」に合っていると思って始めたファミレスのバイト先では、重い荷物を持ったのをきっかけに「力強い女子キャラ」となり、「ハルオ」と呼ばれます。

そして、大学を卒業して入社した会社では、なるべく自分の「キャラ」を出さないように過ごしていたので、クールで、一匹狼でいつも紳士的な「キャラ」となり、「ミステリアスタカハシ」と呼ばれるようになりました。

彼女は、そんな自分のことを

「あるコミュニティーの中で『好かれる』ための言葉を選んで発信する。その場に適応するためだけに『呼応』する。ただそれだけのロボットのようなものだったのだ。」

(本書より引用)

と感じています。

ですから、それぞれの「キャラ」をハルカだと信じている友人・知人が結婚式で一堂に集うと大混乱になってしまうというわけです。

そんな、ハルカの本当の姿を知っている友人が一人だけいます。小学校からの幼なじみであるアキです。(ちなみに、婚約者のマサシとは、高校時代の「アホカ」のキャラで付き合っています。)

この悩みをアキに相談すると、親身に相談に乗ってくれて、さらに、「結婚祝い」としてあるプレゼントを渡してくれます。

そのプレゼントとは・・・

ここから先を話すと「ネタバレ」になってしまうので、興味のある方はぜひお読みください。

さて、この「ハルカ」はかなり極端ではありますが、私たちの中にも、

「その『場』の空気に『呼応』して言葉を発したり、行動をしたりする。」

という一面は、必ずあると思います。

このことを心理学では、「ペルソナ」と呼びます。

「ペルソナ」とは、「仮面」という意味で、私たちはある意味いろんな仮面をつけて社会生活を送っているということです。

例えば、私には、職場では「校長」、家庭では「夫」「父親」「息子(両親と同居なので)」、スタジアムに行けば「サッカー解説者」という「ペルソナ」があるわけです。

確かに、私の中にもその場面場面で使い分けている「キャラ」があるように思います。

最近は少なくなってはきたものの、数年前まで、よく家庭で妻に言われたセリフがあります。

「あんた、よくそれで校長が務まるね!」

どんな場面でこの言葉をあびるのか?

それは、妻の話を新聞を読みながらとか、テレビを観ながらとか、上の空で聞いていた時でした。

「職員の話をこんなふうに聞く校長は最低だ!」

と言われているわけです。(ちなみに、妻の職業は小学校の教師です)

まさに、「ペルソナ」の負の部分です。

私にもいくつかの「ペルソナ」がありますが、それがなるべくプラスの意味で一致していくように生きていきたいと、改めて思わせてくれた作品でした。

今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

今日は、土曜日です。私は、このあと自転車競技部の大会の応援に久留米競輪場へ行ってきます。

皆さんの土曜日が、素敵な一日になりますように。