どうも。南弘一です。千原台高校の校長をしています。とともに、地元熊本でサッカー解説の仕事もしています。
そして、サッカー関連でしている仕事の一つに「指導者養成インストラクター」という仕事があります。仕事の内容は、「指導者ライセンスを取得しようとする皆さんを対象とする講習会の講師業」です。
昨日は、その仕事で阿蘇の高森町民体育館・グラウンドに行ってきました。
21名のサッカー指導者の方々が、熊本県サッカー協会が主催する「C級指導者養成講習会・高森コース」を現在、受講中です。
皆さん、熊本県内で小中高校生へのサッカー指導に携わっている人たちですが、年齢は20歳から49歳までと様々で、選手としての経歴も元海外でプロ選手としてプレーした人から、選手経験はほとんどありませんという人までいて、これまた様々です。
そんな受講生の皆さんに共通するものがあります。
それは、
「今、自分の目の前にいる子供たちを少しでもうまくしてやりたい!」
「そのために、自らの時間とお金を使って、サッカーを学びたい!」
という熱い思いです。
「C級指導者講習会」の日程は8日間。その間に、「ゲームの分析」「テクニック」「サッカーの原則」「個人戦術」「プランニング」「コーチング」など多くの分野を学びます。
そして、最後に待っているのが「指導実践」です。
「指導実践」では、自分で「プランニング」した「トレーニング」の指導を自ら行い、それを我々インストラクターが評価します。これに合格しないと「ライセンス」を手にすることは出来ません。
私自身、指導者として歩み始めたばかりの三十数年前に「C級受講者」として「指導実践」を行って以来、「B級」「GK‐B級」「ジェネラルA級」「GK‐A級」とライセンス講習を受講するたびに「指導実践」を行いました。
また、「インストラクター」としても、その年の「指導者養成講習会」を主宰するためには「インストラクター研修会」への参加が義務付けられており、そこでも、必ず「指導実践」が行われます。それを評価するのは、JFA(日本サッカー協会)のインストラクターです。
「指導者養成講習会」で「指導実践」を行い、その評価が合格ラインに達しない際には「追試」を実施します。受講生の皆さんに指導のポイントを的確に伝え、受講生の皆さんのコーチングの力を合格ラインまで引き上げるのが、私たちインストラクターの責務です。
かつて、JFAが主催する「GK‐C級指導者講習会」にインストラクターとして参加したときに、こんなことがありました。
そのコースでも「指導実践」を行い、数名の「追試」が出ました。その中の一人に青木さん(仮名)がおられました。彼の年齢は40代。GKとしてのプレー経験は高校の部活動までということでしたが、地元の少年サッカークラブでGKコーチを任されていて、GKコーチとしての力量を高めたいという思いで参加されていました。
「指導実践」の中では、選手たちのプレーを向上させるためのお手本を示す「デモンストレーション(以下デモと表記)」を行います。青木さんは、この「デモ」がなかなかうまく行かずに「追試」となりました。
元プロのGKも参加しているコースの中で、青木さんのように選手経験が豊富とは言えない指導者にとって、「デモ」は最大の難関です。その気持ちは痛いほどわかります。なぜなら、私自身が青木さんと同じような経験をしてきたからです。
私が「GK‐B級」を受講したときに、同部屋で受講したのは、元清水エスパルスのGK真田雅之さんでした。そして「GK‐A級」を受講したときに同部屋だったのは、元東京ヴェルディのGKで、現在は川崎フロンターレのGKコーチをされている菊池新吉さんでした。いずれも「元日本代表GK」です。それに対して、私の選手経験は「国体レベル」。全く比べものになりません。
さて、「追試」に挑む青木さんの「指導実践」の中で、ついに「デモ」の場面がやってきました。選手にシュートをしてもらい、青木さんは、渾身のセービング。見事にシュートされたボールを右手で弾き出し、好セーブ!合格をつかみ取りました。
最後のセーブで足をつってしまった青木さんに、
「大丈夫ですか?」
と声をかけに行くと、青木さんは
「大丈夫です。」
と笑顔で応えてくれましたが、その目からは涙があふれていました。
このような指導者の皆さんの「サッカーにかける情熱」の結集が、今の「日本サッカー」を支えています。
「C級指導者養成講習会・高森コース」は、この3連休も毎日行われ、さらに、来週の週末へと続いていきます。受講生の皆さんのサッカーに対する情熱を「リスペクト」し、しかっりとその情熱に応えられるようにインストラクターの責務を果たしていきたいと思います。
今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。3連休中日の日曜日。素敵な一日をお過ごしください。