YouTuber校長日記

YouTuber校長として、サッカー解説者として日々の生活の中で感じたことや本を読んで学んだことなどを書きます!

熊本市立高校改革 「理想」と「現実」のはざまで・・・

どうも。南弘一です。千原台高校の校長をしています。とともに、地元熊本でサッカー解説の仕事もしています。

現在、熊本市では「熊本市立高校・専門学校改革」が進められています。このことについては、以前のブログでもお話ししました。

その「令和3年度第3回検討委員会」が、昨日行われました。「検討委員会」のメンバーは、教育次長ほか教育委員会の幹部の皆さん、事務方の皆さん、当該高校・専門学校の校長3名、中学校の校長代表1名という構成です。

昨日の「議題①」は、「千原台高校の教育課程」でした。「教育課程」というのは、簡単にいうと「学校でどの教科の授業を何時間するか?」ということです。

読者の皆さんの中には、

「えっ、何でそんなこと話し合うの?」

「学校だから、国、社、数、理、英。それに、体育、音楽とか…決まってるんじゃないの?」

と思われる方もおられると思います。

それが、現在の学校においてはそうではないのです。

高校を例にとると、まず、その設置者(教育委員会)がその学校のスクールミッション(理念)を定めます。それを受けて校長がスクールポリシー(教育目標)を定めます。

その内容は、グラデュエーションポリシー(卒業認定に関すること)、カリキュラムポリシー(教育課程に関すること)、アドミッションポリシー(入学者受け入れに関すること)となっています。

つまり、「どんな卒業生を出すのか?」「そのためには、どんな教育課程で学ばせるののか?」「そこで学ぶ生徒をどのような『入試』で入学させるのか?」ということです。

今回の改革で定められた熊本市立高校の理念は「自ら考え、主体的に行動し、多様な人々と協働しながら(エージェンシー)、自らの人生とより良い社会(ウエルビーイング)を創造する力を育てる学校」で、千原台高校では「情報やビジネス、スポーツに関する高い専門性を有するスペシャリストを育成する。」となりました。

これに見合う「卒業生を輩出」することが目標であり、そのための「教育課程」を編成し、そこで学びたいという生徒を獲得するための「入試制度」を決めるわけです。

ここで、突き当たるのが「理想」と「現実」のはざまです。

千原台高校がめざす「卒業生像」は、「スポーツのスペシャリスト」と「情報・ビジネスのスペシャリスト(今回の改革で『起業家』の育成も目指すとなりました)」です。

確かに、運動部の活躍はすばらしく、2年前にはプロ野球選手を輩出していますし、先日発表された東京オリンピック男子ハンドボール日本代表のGK岩下祐太選手は、本校の卒業生です。彼らはスペシャリストと言えます。

また、毎年10名程度の生徒は、いわゆる「スポーツ特待生」として大学進学や就職をしています。

しかし、健康スポーツコースには40名の生徒が在籍しているので、残りの30名は一般的な入試や就職試験を受けて進路を決定しています。

情報・ビジネス分野においては、卒業後に各方面で活躍されている方々はたくさんおられますが、卒業式してすぐに「起業家」になるという人は、まずいません。

これが、「現実」です。

なので、目の前の生徒を日々指導し、彼らの進路指導に向き合っている我々現場の教師は、どうしてもその「現実」をみてしまいます。

しかし、「改革」を行い、10年後の社会を支える人材を育成するためには、「理想」を求めることも大切です。

教育課程における「理想」の象徴的な教科が「探求」です。今回の改革では、千原台高校は、「スポーツ探求科」と「情報・ビジネス探求科」が創設されます。

現在、作成中の教育課程では、3年間に取得する90単位中の30単位程度が「探求」になる予定です。つまり、全体の3分の1の授業が「探求」になります。

「探求」と言われても、「それ、何?」と思われる読者がほとんどだと思います。

本校では、「総合的な探求の時間」と「国語系探求、英語系探求…」などの「教科系探求」を行う予定です。「総合的な探求の時間」とは、小中学校にある「総合的な学習の時間」の高校版と思ってください。

つまり、「探求」の時間には教科書がありません。全体の授業の3分の1は、教科書のない授業を行っていこうという改革になるわけです。

「理想」の生徒を育てて行くために必要なことと思いつつも、我々現場の職員には、かなりの覚悟が必要な改革です。

校長として、現場の職員の声に耳を傾けつつ、理想を追う、挑戦することの大切さを語り続ける日々が続きます。

今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。今日一日が、皆さんにとって良い一日になりますように。