どうも。南弘一です。千原台高校の校長をしています。とともに、地元熊本でサッカー解説の仕事もしています。
千原台高校には、外国にルーツを持つ生徒たちが何人か在籍していることは、以前のブログでお話ししました。そして、それをブログに書いたことをきっかけとして、私の高校の先輩で元アナウンサーの清原憲一さんが、ボランティアとして「日本語教室」の講師役を引き受けてくださっていることもお話しました。
今も、二人の生徒たちが清原さんから「日本語の発声、発話」を楽しく伝授していただいています。
ただ、日本に来てからの日が浅く、「日本語の発声、発話」の教室にはついていけないレベルの生徒もいて、その生徒には「日本語指導の資格」を有した講師が必要であるということになり、「日本語指導の非常勤講師」の募集をしていました。
千原台高校は熊本市立の高校で、いわゆる公立高校です。公立高校で「日本語指導」という教育課程外(授業と認められている教科以外)の講師を募集することは異例のことです。熊本市教育委員会に生徒の現状を伝え、交渉を重ねた結果、暫定措置として何とか認めてもらい、ようやくホームページに「非常勤講師募集」の掲示をすることが出来ました。
しかし、現在の教育界は「深刻な人手不足」。教科の講師、非常勤講師の募集にも応募がなくて、困っている学校がたくさんあります。千原台高校の「日本語指導・非常勤講師」にも応募が来ない日々が続いていました。
そんなとき、一通のメールが届きました。
「8月恒例の学年同窓会は、コロナのために今年も中止します。来年こそは、また、笑顔で会いたいですね…」
そっかー。今年も中止かー。寂しいけど仕方ないなあと思いつつ、差出人の名前をみました。
差出人は、井野(旧制佐野)成美さん。高校時代のクラスメイトで高校卒業以来ずっと同窓会のクラス幹事をしてくれています。
「了解しました。残念ですが仕方ないですね。また、笑顔で会える日を楽しみにしています。」
と返信した後に、一つの記憶が蘇りました。
それは、2年前の同窓会で佐野さん(旧姓が呼び慣れているので、こちらで呼ばせていただきます。ご容赦ください。)が、
「私、今、日本語教師をしよっとたい。(してるのよ)」
と話していた光景です。
学校で事務長に
「日本語講師の応募、まだ、来ていませんよね?」
と確認をとり、早速、佐野さんに連絡してみたのが一昨日のことです。
「ご無沙汰しています。南です。以前、お会いした時に外国人の日本語指導のお仕事をされていたとお聞きしたのを思い出し、連絡しています。
私は、今、千原台高校の校長をしているのですが、本校で外国にルーツを持つ生徒の日本語指導をしてくれる非常勤講師を探しています。お力をお借りできないか?という相談です。
都合のつかれる時間を教えていただいて、こちらから、一度お電話をしたいと思っています。
お電話で話せる時間を知らせていただけると嬉しいです。」
すると、約2時間後、次のような返信が来ました。
「承知しました。今、前期試験で博多です。終了後に連絡しますね。ありがとうございます。」
佐野さんは、今も現役で日本語指導の講師をされていて、週に3日、福岡県の博多にある専門学校にお勤めでした。
その後、電話が通じて事情をお話ししてみると
「わかった。月水金は、博多に行くけど、火曜と水曜は空いてるけん、私で力になれるならよかよ(いいよ)。」
と言ってくれました。
そして、昨日、学校に来ていただき、面接、採用となったわけです。
早速、該当の生徒と顔合わせをしてもらい、来週から授業のスタートです。
同窓生の絆に感謝!感謝!です。
佐野さんは、高校時代からいつも元気で、明るくて、男女関係なくとても多くの人たちに親しまれる人柄でした。剣道部に所属していたのですが、同学年の女子部員は彼女一人だけでした。そんな環境の中で、三年間、部活動をやり通した彼女ですから、私のような体育会系男子のことも
「しっかりせんね!」
と叱り飛ばしてくれるようなクラスの元気印!
そんなわけで、高時代の成績も私なんかよりずっと優秀だったのですが、多くの生徒が大学へ進学する中で
「自分は就職する!」
と公務員試験を受けられ、農林水産省食糧庁へ就職されました。その後、しばらくは熊本に勤務されましたが、平成23年からは、農林水産省の貿易調整係長を拝命され、霞が関でいわゆる「ノンキャリア官僚」として活躍されています。
その2年後に、親御さんが体調を崩されたことで退職されて熊本に戻られました。それから、日本語講師の資格を取得して現在に至るという、まさに「スーパーウーマン」です。
さらに、昨日お会いして名刺を交換すると「日本語教師」のほかに「申請取次行政書士・なるみ行政書士事務所代表」の肩書が・・・ 事情を聴くと
「日本に来た外国人の子たちに日本語を教えてるんだけど、言葉だけでは解決できない問題がいろいろあるとたい。このままだと日本に来たことを後悔したり、日本人を恨んだりしてしまう。だけん、一人ぐらい『この人がいて良かった』と思ってもらえる日本人がいてもいいかなと思って、在留資格の手続きとかもしてあげられるように行政書士も始めちゃった!」
何という素晴らしいこころざし!何というバイタリティー!
こんな素敵な講師をお招きできたことに本当に感謝です。
今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。週の半ばの水曜日。素敵な一日をお過ごしください。