YouTuber校長日記

YouTuber校長として、サッカー解説者として日々の生活の中で感じたことや本を読んで学んだことなどを書きます!

村田沙耶香著「コンビニ人間」(文藝春秋)を読んで思うこと…

どうも。南弘一です。千原台高校の校長をしています。とともに、地元熊本でサッカー解説の仕事もしています。

さて、今日も昨日に続いて、最近読んだ本から感じたことをお話しします。

今日の一冊は、

村田沙耶香著「コンビニ人間」(文藝春秋)です。

この本を私が手に取った理由は、本書が「第155回芥川賞受賞」の作品だったからです。

皆さんは、「芥川賞」と「直木賞」の違いを知ってますか?

簡単に言うと「芥川賞」は、新進作家による純文学作品の中から選ばれる賞であり、「直木賞」は、新進・中堅作家によるエンターテイメント作品(大衆小説)から選ばれる賞です。

つまり、どちらも若手の作家に与えられる賞というのは、共通しているのですが、違いは、作品が「純文学」か「エンターテイメント作品(大衆小説)」かということです。

バリバリの「体育会系」として青年時代を過ごした私にとっては、「エンターテイメント作品(大衆小説)」には、多少触れた経験はあるものの「純文学」という作品に触れた経験はほとんどありませんでした。

そこで、まずは、「芥川受賞作」を読んでみようと思ったわけです。

本書の帯には、「コンビニこそが、私を世界の正常な部品にしてくれるー。」

と書かれています。

主人公である古倉恵子は、36歳独身です。

「大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。

日々食べるのは、コンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と『いらっしゃいませ!』の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくる。

ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが・・・。」(本書帯より引用)

本書は小説なので、あまり詳しくストーリーをお話しして「ネタばれ」になってはいけないのですが、もう少しだけ付け加えますね。

主人公の古倉恵子は、子ども時代からいわゆる「ちょっと変わった子」でした。「常識的」という感覚がなくて、すべてを「合理的」に解決しようとするのです。

例えば、男子二人がけんかを始めたときに、周りの女の子が「止めてー!」と叫ぶと、恵子はそこにあったスコップで男の子の頭を殴り、男の子の頭からは血が噴き出します。周りはシーンとなり、確かにけんかは終わります。

先生から「なぜ、あんなことしたの。」問われると、

「みんなが『止めてー!』と言ったので、ああするのが一番止められると思ったから。」

と答える。

しきりに、「すみません。」と頭を下げる母親の姿をみて、「なんで謝ってるのかな?」と不思議に思う。

そんな少女でした。

しかし、少しずつ「自分の基準で動く」とまずいことになると気づき、何も自分から行動しない。なるべく言葉を発しないという青春時代を過ごします。

そんな彼女に「生きる意味」を与えてくれたのが、「コンビニ」であり、そこで、「アルバイト」として働くことでした。

彼女はコンビニでアルバイトとして、働いている時が最も幸せであり、もちろん、バイト生としては、超優秀です。

そして、そんな生活を続けて18年目に、彼女の働くコンビニに同じバイトとして雇われたのが白羽さん。

この男は、一言で言うと「ダメ男」です。仕事は長続きせず、「いつか起業して大儲けしてやる。それには、金を出してくれる女と結婚しなければ。」と考え、バイトしながら、女性を物色。そのうち、客にストーカーまがいの行為をしてクビになります。

もちろん、恵子も白羽さんに全く好意など抱いてないのですが、クビになったあとも店の前の物陰から客を待ち伏せている彼の姿をみかけ、

「今度こそ警察に捕まりますよ。」

と声をかけます。すると、白羽さんは、恵子に自分の今の身の上を話し始め、行くところがないことを聞いた恵子は、

「じゃあ、うちに来ますか。」

と誘います。もちろん、男性として好意を持ったわけではなく、「それが現状では最も合理的である」という彼女独特の判断です。

こうして、二人の奇妙な同居生活が始まります。

そうなっていることを知った周りの人たち(恵子の家族やコンビニ店員)は、「おめでとう」と言います。そして、白羽さんも働かずに身を隠せることをうれしく思っています。これが、「合理的」と考えた恵子はこの生活を続けるのですが、そのうちに彼の借金問題に巻き込まれて、「正社員として就職する」ということが必要な事態に追い込まれ、ついに18年勤めたコンビニを止めることになります。

このあと、彼女の生活はどんどん崩れていくのですが・・・

結末が気になる方は、ぜひ、この本を読んでみてください。

私が、この本を読んで感じたことは二つです。

一つ目は、「普通」とは何なのか?ということです。

恵子の「普通」と社会一般でいう「普通」は、かなりずれています。そして、一般的な「普通」の基準からすると、大学卒業後に就職せず、コンビニでバイトを18年続けていて、さらに未婚という彼女は、いわゆる「負け組」という見方をされています。

一方、私は大学を卒業し、「教師」という仕事に就き、結婚して子どもの父親になるという世間でいう「普通」の人生を歩んで来ました。

恵子は、コンビニでバイトをしていることが彼女の「幸福」であり、彼女は自分のことを「コンビニ人間」だと感じています。

これを私のような人生が「普通」であり、恵子のような人生は「普通」ではないと言って良いのでしょうか。

もう一つは、私は果たして「学校人間」なのか?

ということです。

22歳で大学を卒業し、その後「小学校教師」となり15年働き、中学校に移って18年。教頭、校長となり、今は高校で校長をしています。

私の人生は、ずっと「学校」の中にあります。

その生活も残すところ3年です。(定年退職年齢が60歳であればですが…)

その後の自分の人生はどう展開するのか?

不安でもあり、楽しみでもあります。

そんなことを考えさせてくれた一冊でした。

今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

今日は、ロアッソ熊本のホームゲーム、対福島戦があります。

熊本シティーFM791「ビクトリーラジオ」で午後2時からライブ中継をします。

私が解説を務めますので、そちらも聴いてもらえると嬉しいです。(熊本シティーFM791のホームページから聴けます。radikoでは聴けないのでご注意を)

ということで、今日も素敵な一日をお過ごしください。